祖母は誰にでも基本的に2人いるはずだが、この歳(想像するな、感じるんだ)にもなると残念ながら2人とも既に他界していたりする。

2人とも大好きだったが、そんな祖母のエピソードにも割とエッジの効いたものがいくつかある。

母方の祖母は岩手に住んでいた。
幼少期から夏休みの1ヶ月間は必ず岩手に行き、岩手の大自然と遊びながら過ごした事は、私にとっても弟にとっても代え難い経験だったと思っている。

東京と比較すればそれはもちろん田舎。
何もないのである。
何もないなりの遊び方を「大人」から習ったりしたもんだが、それはまた凄い内容なので別の機会に。

そして、もちろんだが東北弁をみんな喋っているのだ。

おかげ様で私は今でも大抵の東北弁を理解する事が出来る。

「こっち来て、これを食べなさい。」

「こ!!」「け!!」

である。

そんな東北弁を語る上で頻繁に話題になるのが「さ行」の発音についてだ。
どうしても、「し」が「す」になる。
そう聞こえるだけなのだが、「す」にしか聞こえない。

東北の方々は「すし」と言っているが、「すす」に聞こえるのである。

例に漏れず、ばあちゃんもゴリゴリの東北弁で話してくる人だったのだが、ある日私は衝撃的なものを家の中で見つける。

ばあちゃんちのキッチンにて、ジュースやお菓子を物色していた時の事…。

たまたま目に入った調味料入れ。
(何個か並んでいて、砂糖や塩を入れておくやつ)

その調味料入れの蓋に、物凄い達筆で

「すお」

と書かれていた。

もう1度言うが、東北の人も「すし」を「すし」と思って喋っている。
「すす」と思っているわけではない。
すなわち、「すお」も「しお」だと思って喋っているはずだ。

でも、目の前には「すお」

私はその場で転がり回り、涙を流しながら笑った。

そもそも、何故調味料入れにマッキー(油性)で「すお」と書く必要があったのか…!!

もちろんばあちゃんにこの事はすぐに報告したが、

「ばあちゃん、な、なんでこれ…、すおって、すお、すおって…!!」と爆笑しながら質問する私に、

同じ様に大爆笑しながら

「すお(しお)だと思って書いた」

とばあちゃんは言った。